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2016年10月25日 (火)

『はまぐりの草紙』を読んでみた

 ハマグリについて書かれているのかと、本の題名にひかれて買ってみた。

 室町時代のおとぎ草紙を現代社会の脚色を加えながら現代語で綴った絵本なのだが、やたらと漢字が多い文章だし、裸の女性のイラストは出てくるし、まあ子供向きとは言えない。マンガがこれだけ普及しているのだから、大人が絵本を読んで悪いことはあるまいと思い、内容についても著者についても何も知識がないまま読み始める。

 今の社会を皮肉る言葉がときどき出てくるのが面白くて、一気に読んでしまう。最後に原書通りの物語も収録してあった。著者紹介の部分を見ると、いろいろ賞をもらっている人らしい。こういう古典の翻訳も楽しいかもしれないと、そのアイディアに感心する。

 話の筋は、竹取物語と、鶴の恩返しと、浦島太郎を合体させたようなもの。結論ははっきりしていて、親孝行をすると天からご褒美がもらえるよ(だから親の面倒をしっかりみなさい)、というものだった。若い世代に親の介護をさせようとする工夫をするのは、なにも今に始まったものではないことがよくわかる。親孝行について教えられずに大人になった人に親の介護をさせるために、複数世代の家族を推奨するような法律を検討するよりも、子供の時からこのような物語を読み聞かせるほうが効果はあがるかもしれない。

 ご褒美が7000年という寿命だそうなので、主人公は現在も生きている計算になる。しかし、あと数千年して年老いたら、誰が介護してくれるのだろうと、要らぬ心配をしてしまった。昔は「介護」を「親孝行」と呼んだことにも気づいた。言葉はうまく使ってこそ威力を発揮する。
Hamagurinosoushi
参考文献
『はまぐりの草紙』 文:橋本治 絵:樋上公美子 講談社 2015年刊
 
 

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