日本初の砂袋護岸
砂浜には構造物は要らないという思いが強いので、どうしても批判的な言い分になってしまいます。
大炊田海岸は海岸林の幅が狭く、人の居住地が海岸線近くまで広がるので、コンクリートの護岸構造物がない場所は全域に砂袋の護岸が作られることになりました。予算に余裕があれば、住吉海岸の護岸がない部分の袋護岸構築に回されます。
住吉では突堤(最終的に沖へ300m突き出す計画)の工事が始まっていて、今年度は75mまで延長工事がおこなわれます。一ツ瀬川方面から宮崎港方面へ流れる砂を止めて住吉・大炊田海岸の砂浜が広がることが期待されています。砂がつくまでの数年間に、住吉の砂丘(松林)がこれ以上削られないよう、現在の浜崖から少し海側の砂浜に、砂を詰めた巨大な袋が海水面から4mの高さまで積まれます。見た目は麗しいとは言えないものなので(袋が直射日光で劣化して破けるのを防ぐためもあって)、養浜の土砂で埋められます。
表面を覆う土砂が高波で削られるようなときは、袋の下の砂浜も削られることが考えられます。そうすると袋が砂に沈んだり転がったりする恐れがあるので、袋の下の砂浜は、アスファルトの板(しなる板)で覆うそうです。赤江浜の人工リーフの下に敷かれているようなものではないかと思います。袋護岸の海側に、海水面から1mの高さ(たぶんほとんどが砂の下)に、幅6mの板が水平に敷かれます。浜が狭くなっていて波打ち際に近いので、寄せては引く波で重いアスファルトの先端(海側)がだんだん沈んでいき、最終的には、袋護岸の下の砂浜をつかむように地下へ向かって折れ曲がることが期待されています。
袋護岸も、アスファルト護岸も、土砂あるいは砂の下に建設されるので、工事が終わった時点では、砂浜の景観が損なわれることはないようです。ただ、このような護岸工法は日本で初めてなので、実際の台風の大波に耐えるかどうかを見るための実績第1号になります。大波で削られて露出したら、そのたびに埋める工事が行なわれるようです。
アメリカでは似たようなものがすでに造られていて、ハリケーンで壊れる例もあるようです。袋護岸がなかった場合よりは浜の被害が少なかっただろうということみたいですが、無残に破壊された巨大な袋やアスファルトの板の破片が砂浜から突き出ている写真を見せてもらいながら、砂浜は死んでしまったのだなと思いました。
ちなみに、袋護岸は「サンドパック(sand pack)」というカッコイイ名前がついています。10月の末になればアスファルトの板も浜の工事現場に納品されるので、佐土原にある国交省の海岸出張所を訪ねれば、どのような工事なのか現地で説明してくれるそうです。